現場の人手不足問題を解決するために外国人を頼ろうという国の方針

なぜ今まで外国人労働者を迎えなかったか、これから受け入れるとはどういうことか

政府や入管の考え方

■今、日本にたくさんいる外国人はどんな在留資格?


日本の入管制度の方針をものすごくざっくり言うと

「日本国の国益になる優秀な人だけ在留していいよ」 「観光はどんどん来て」 です。


コロナも収束して街中でたくさん外国人を見かけるようになりましたが、大半は「短期滞在」いわゆる観光ビザです。

日本でたくさんお金使おうって観光客はもちろん歓迎ですが、働いてお金を稼ごうって人は日本のお金が国外に出ることにもなるのでちゃんと審査されているのです。


■人材不足の業界を外国人材で補うことの何が問題なの?


建設業界の労働力不足は、そもそも少子高齢化で若者自体が少ないうえに、その少ない若者たちが建設業界で働くことを希望しないというダブルパンチに原因があります。


これを国内で賄おうとするなら、賃金を大幅に上げるという手もありますがそれは工事価格に反映されるわけで、民間なら住宅価格等、公共事業なら国家予算にも大きく反映されてしまいます。

それに同じ労働力不足問題を抱える介護や農業、漁業といった他の業種との公平性も担保されなくてはいけません。

当然「人がやりたがらない仕事をしてる人の報酬は高くあるべきだ」という立場からも議論が続いています。

一番正当な道で政治の力で大きな改革をする可能性もありますが相当難しい道です。


なので、日本政府は「いまのところ外国人材に頼ろう」という方針をとっているのです。


「いまのところ」というのがミソです。

今、日本で働いて産業を動かしてほしいとは思いつつ、その人たちが老人になったときに医療や年金受給者になられるのは困る、というのが行政側の本音なんです。


後述しますが、いわゆる労働者と呼ばれる人たちを行政は不安視します。

犯罪するかもしれないし、税金払わないかもしれないし、どうかしたら面倒見なくちゃいけなくなるかもしれない人たちと見ているのです。


なので、在留期間中働いてもらったら国に帰るなりよその国に行くなりして欲しいのです。
下品な考え方と思うかもしれませんが、民意ともそんなに離れてないと思います。


僕は入管の考え方をしばしば家族や会社に例えて説明するのですが、繁忙期のバイトくんを一生面倒見ることはできないよね、って感覚の延長線ですね。家の手伝いしてくれたから家族だ、相続もしてやる、と簡単にいかないのと一緒です。


そして今までは労働者に該当する人たちに在留資格を出してこなかったんです。
結果それによって、治安が維持されてきたともいえると思います。
無害で手のかからない人たちだけに在留を認めたいのです。


その判断材料が学歴なんです。


■入管は思いっきり学歴で判断する


いわゆる就労ビザと言われる「技術人文国際」や「経営管理」という在留資格では学歴や職歴が問われるので、この在留資格を持ってる人はほとんど専門卒以上の学歴を持っている方です。

もちろん税金や社会保障の未納などは行政サービスのタダ乗りになっちゃうので確実に日本人より厳しく見られてます。


コンビニのスタッフも外国人の方がたくさんいますが彼らは「留学」の在留資格なので学校機関に通って何かしらの勉強をして学歴を得る予定の人たちです。


つまり日本で働いてる外国人のほとんどが「学歴のある真面目な人」なのです。
(例外もたくさんありますがこれ以上は触れずにおきます。)


逆に言うと、ならず者の可能性がある人には在留資格は出ません。

言い換えると「学歴の低い人は不良行為するかもしんないし、税金とか滞納するかもしんないし、わざわざ日本で働いてもらう必要ないから要りません」ってことです。乱暴な言い方かもしれませんが割と誇張なしでこういうことです。
日本で働いて日本で暮らすのは日本人だけの権利で外国人は基本持ってません。
それを個別に許可するのが在留資格なわけだから、別に権利を奪ってるわけではなく、0の状態ってことです。


昔先輩行政書士に「裁判所はグレーは白になるけど、入管はグレーは黒と判断する」と言われたことがあります。
学歴のない人でも真面目で優秀な人はたくさんいます。もちろん学歴のない人が全員悪いことをするわけでもありません。

でも、学歴のない人の中の一定の割合に日本にとって害をなす人がいるため、完全に「この人は無害で国益になりますよ。」と立証されない限りはお断りするという方針なのです。

それくらい入管にとって学歴は大きな判断材料なのです。


■外国人材を受け入れるポイント


つまり、外国人労働者の受け入れが進むと、今までいなかったジャンルの外国人が増えるという点で行政は慎重になっているのです。

今まで見ることのなかったヤンキー高校出身のあんちゃんが街を歩きだす、と言ったらリアルな感覚でしょうか。


ここでトラブルを起こさないために、「監理団体」「登録支援機関」が日本での暮らしを支援するという制度が組み込まれています。

労働者との定期的な面談や、雇用する事業者の雇用状態のチェックなどが義務付けられ、単一民族国家である日本が外国人を受け入れていく道を拓いています。


実際にこれから外国人を雇おうという方はこの「監理団体」「登録支援機関」選びが最重要ポイントと言っても過言ではないでしょう。


日々現場と労働者の間に立っている「監理団体」「登録支援機関」は我々行政書士も歯が立たないほど入管法に精通していることもしばしばです。
あらゆる労使トラブルや事例に誠実に対処してきた「監理団体」「登録支援機関」を選ぶことができれば心強いパートナーとなることでしょう。


行政書士自ら「監理団体」「登録支援機関」となっているケースもありますし、弊所のように信頼できる「監理団体」「登録支援機関」とお付き合いをしておいて、おつなぎすることも多いです。


美容室2

技能実習は育成就労に

目的変更の意味

技能実習制度は、日本の人材不足を背景に、1993年に開始されました。

この制度の目的は、発展途上国の労働者に日本での技能や技術を習得させ、自国の発展に貢献してもらうことでした。

しかし、実際には労働力不足を補う手段として活用される場面が多く、制度の目的との乖離が指摘されてきました。
さらには労働者たちが職場で人権侵害を受けるケースも頻発し、失踪した外国人が不良になってしまうということもいまだに発生しています。


このような背景を受け、政府は2024年3月15日に閣議決定で技能実習制度を廃止して、新たな制度「育成就労」へ移行することになりました。


技能実習制度が国際貢献人材育成を目的としていたのに対し、育成就労制度は、人材確保と人材育成を目的としており、基本的に3年間の育成期間で特定技能1号の水準の人材に育成すとしています。

これは大きな違いです。今までも実質労働力確保目的での実習生の受け入れが大半を占めていたのですが、目的が国際貢献と言われてしまうと制度の悪用をしているように見られてしまうこともあるし、後ろめたさも感じてしまいます。

なので「ちゃんと労働力として迎えるんだ」と言えることは事業者側も堂々と受け入れられるようになったということです。
私たち行政書士や監理団体、送り出し機関も「外国人材入れましょうよ」と正面から薦められるようになったということです。


気分的にも「先進国様が教えてやるよ」という上から目線な感じから「オラに元気を分けてくれ」と素直になった感じがしますね。

技能実習生と特定技能人材の比較

どっちの制度で外国人を雇えばいいの?

  • 王道ルートは技能実習→特定技能

    真っ白な状態から外国人労働者を雇うというなら、技能実習→特定技能が王道ルートです。

    技能実習が育成就労に代わり、「育成」の目的が特定技能1号程度にすることなわけですから当然ですね。


    メリット、デメリットなどを比較してみましょう。


    【雇用コスト】

    一見、技能実習のほうが最低賃金からスタートできる(技能実習→最低賃金以上、特定技能→日本人と同等以上)から、とか見えるかもしれませんが、実は雇用コスト自体はそんなに変わりません。


    【在留期間】

    まず大きいのが、滞在できる期間の上限が単純に長くなるということが挙げられます。

    技能実習は1号1年、2号・3号2年ずつで最長5年働くことができ、さらにその後特定技能に移行して5年働くことができます。

    せっかく育てた人材には長く働いてもらいたいですし、数年技能実習やってまあまあ

    の場合も、特定技能で雇いなおすか見究めることもできるというのは経営者にとって大きな要素です。

    期限のない特定技能2号への移行がしやすい見込みであればこの部分はそんなに考慮しなくてもいいでしょう。


    【人材のレベル】

    特定技能人材は、日本語検定N4以上と、各業種が指定する試験に合格することで特定技能人材となれます。

    N4は日常的な内容であれば日本語で会話したり、読んだりできるという程度です。

    日本人同士の会話のスピードについていくのは難しいです。

    技能実習でも送り出し機関で日本語の教育を受けてくるので、日本語能力的にはそんなに差はないと言ってもいいレベルです。


    なので試験の方で、技能実習修了程度の業種についての専門知識を得ているかが問われるわけですが、その内容が現場の実態に合致しているかというと、業種によって…という感じかもしれません。

    一方では、海外で日本の情報をキャッチし申し込んで試験を受験するという手順を踏むことができる程度の人材、という見方もあるかもしれません。


    【転職】

    技能実習制度では転職は原則できません。

    その点で転職可能な特定技能に比べて人材流出におびえなくてよいという面は大きいと思います。

    しかし、そのため失踪や人権侵害事件が多発しているため、育成就労に代わるにあたり緩和されていく予定なので、人道的にも大きなメリットとして捉えるのはおすすめしていません。


    制度的には、技能実習→特定技能ルートが王道で、試験ルートも増えてきているとのことではありますが、まだ8割以上が技能実習ルートである現状で、行政側にも特段試験ルートを増やしたい、という動きもみえていないので、特に事情がないのであれば技能実習生を入れるのが無難な選択でしょう。

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  • 特定技能での受け入れのほうがいい場合

    では、特定技能で雇用した方がいいケースとはどんな場合でしょうか?


    1,留学生で日本に滞在しているアルバイトをそのまま雇いたい

    2,技能実習の業種に指定されていない

    3,広い範囲の業務に就いてほしい

    4,とにかく即戦力が欲しい


    などでしょうか。

    それぞれみていきましょう?


    1,留学生で日本に滞在しているアルバイトをそのまま雇いたい

    これが一番多いのではないかと思います。

    留学ビザなどで日本に滞在しながらアルバイトで入ってくれてる子がよく働いてくれるから雇いたい、というのは雇用後のトラブルリスクも大幅に軽減されるので一番健全なケースともいえるでしょう。


    技能実習制度では、監理団体を通さなければ雇用ができず、監理団体は基本的に海外の送り出し機関から送られてくる子を事業主につなぐスキームで動いているので、最悪の場合帰国して送り出し機関で教育の受けなおしなんて無駄なことになってしまう可能性もあり、時間もお金も無駄にかかりあまり現実的ではありません。


    実際に働いて好印象を持っているわけだから2号移行も見据えて雇用してあげるとこまでいければ期限の問題も解消され双方にとって理想的な形になるでしょう。


    2,技能実習の業種に指定されていない

    外食業は技能実習制度の指定業種になっていません。

    飲食店が外国人材に現場で働いてもらうためには特定技能一択となるわけです。

    例外として、10年以上の実務経験があれば「技能」の在留資格で外国料理店などで働くこともできます。


    3,広い範囲の業務に就いてほしい

    技能実習と特定技能では業務・業種の区分の仕方が違います。

    技能実習のほうがはるかに細かく分かれています。(特定技能16分野、技能実習85職種(156作業))


    特に建設業界で、技能実習ではとび職は建設22職種33作業のうちの「とび」というかたちになって、「型枠施工」などに従事することができないところ、特定技能では「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分になるので、「土木」の区分で両方に従事することができます。


    4,とにかく即戦力が欲しい

    ちょっとでも戦力になる人材がいいというのであればもちろん、スタート時のスペックは技能実習生より特定技能人材のほうが勝ります。

    しかし、日本語能力などは大差ないとも言えるので過度な期待はしないほうがいいでしょう。



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CHECK!

建設事業者が外国人材を採用するためにやらなければならないこと

外国人の雇用の際は事業主の状況も審査されます。特に建設業は16分野の中でもちょっと難しいので建設業のみに適用される要件を紹介します。

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    POINT01

    建設業許認可

    建設業で技能実習生を雇用するには、建設業法第3条の許可を得ている必要があります。以前は500万未満の工事や150㎡未満の木造住宅工事、1500万円未満の建築一式工事のみを請け負う企業は許可取得が不要でしたが、技能実習生を雇用する場合は許可が必要になりました。


    外国人雇用を目的に許認可取得を検討してみてもいいかもしれません。


    TdcT法務サポートでは建設許認可もお手伝いしております!


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    POINT02

    建設キャリアアップシステムに登録

    建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System, 略称CCUS)とは、建設業に関わる技能者の資格・社会保険加入状況・現場の就業履歴などを登録・蓄積し、技能者の適正な評価や建設事業者の業務負担軽減に役立てるための仕組みのことで、国土交通省が推進しています。


    失踪者を減らすためなどの目的で義務付けられているようですが、国土交通省が普及させたいから、というのが本音と思っています。


    とはいえ国が推すだけの価値のある制度とも言えます。


    大変・面倒くさいなどの不満も聞かれますが、建設事業者として成長するためにも弊社でも導入を勧めています。

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    POINT03

    月給制にすること

    2020年から建設分野の受け入れ基準が強化され、月給制が義務化されました。

    低賃金でこき使う俗にいう「奴隷労働」的な事例が頻出したためです。

    しっかり働いてもらったらしっかり払う。基本ですね。様々な雇用形態が混在する建設業界では残念ながら買いたたきのような発想をする事業主もいなくならないのでこれは仕方ないのかもしれません。

その他、建設業以外でも共通の主な要件としては、

・監理団体に加入すること

・社会保険に加入させること

・帳簿を作成・保管すること

などですね。


監理団体への加入は事業者単独ではどんな問題が起こるかわからないし、処理できないだろう、というのは弊所も同意です。

前述したように監理団体や登録支援機関は外国人雇用の肝です。

その他の項目については多少省いて紹介していますが、ざっくり言うと

「よそ様の国の若者をお預かりするんだから当たり前のことができない事業者には任せられない」

というところです。

安全にかかわる建設許認可の審査と被る部分も多いですね。

個人事業主からなんとなく確定申告とかもあまりよくわからないまま、腕だけでやってきました!みたいな方も多いと思います。

そういう方はまず許認可取得などから事業を見直してみてもいいかもしれませんね。

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