不法就労助長罪とは

不法就労助長罪とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するもの

出入国管理及び難民認定法 第73条の2では不法就労している外国人を雇用したり、働かせたり、斡旋したりする行為が「不法就労助長罪」として規定されています。

罰則は「3年以下の懲役」または 「300万円以下の罰金」 またはその両方が科されるという非常に重たいものとなっています。


特徴としては、「知らなかったでは済まされない」という点があり、外国人アルバイトを雇ったからと言って入管が指導に来てくれるわけでもありません。
経営者として知っておかなきゃいけないのです。


なので、有名な企業も摘発されています。
いくつか事例を紹介しましょう。


ラーメン「一蘭」(福岡市)【法定時間超過】
概要:ラーメンチェーン「一蘭」が、ベトナムや中国からの留学生計10人を、法定の週28時間を超えて働かせた。
処分:社長や労務担当責任者、店長ら計7人と法人としての同社が書類送検。


新宿中村屋(東京都新宿区)【許可されていない業務への就労】
概要:食品メーカー「中村屋」が、通訳などの在留資格を持つネパール人を、埼玉工場で食品製造作業に従事させた。
処分:法人としての同社と、埼玉工場の管理課係長が書類送検。


ラオックス(東京)【法定時間超過】
概要:免税店大手ラオックスが、大阪市内の店舗で中国人留学生を不法就労させていた。
処分:大阪道頓堀店の元店長ら3人を逮捕・書類送検。法人としての同社と社長ら7人も書類送検。


「働きたい」「働いてほしい」が合致して、さらに直接誰かに被害が出るわけではないので犯罪を行っているという意識を感じにくいのかもしれません。
毎年100件以上の事業者が不法就労助長罪で摘発されています。

就労資格があれば働けるわけではない!

就労資格はその在留資格によって従事できる内容が異なることを知ろう

  • 技術人文国際(技人国)の注意点

    技人国の在留資格で一番留意すべき点は、「単純労働に従事させられない」ことです。
    技人国は大学や専門学校卒業以上の専門的な技術や知識が問われます。

    特にあるのが建設業で、設計士などのデスク職として許可が降りてるのに現場で荷運びばっかやらせてるというパターンです。中小で人手が急に足りなくなった、とか急な手伝いなんかはある程度許容されますが、日常的にそうなるとアウトです。現場に出したいなら特定技能の在留資格を取るのが筋道です。


    たまに「大卒のバイト君を社員にしたいけど、特定技能は健康診断受けさせたり面倒そうだから技人国で採用できない?もちろん現場でも期待してる」とギリギリを攻めようとする事業者さんがいますが、この場合はお断りしてます。

    特に2019年以降は特定技能という在留資格ができて、現場にも出れるし、デスクワークだってできるのですから特定技能で許可を取らない選択肢はありません。

    ましてや健康診断受けさせるのを面倒がるようじゃ、入管法をちゃんと守るのも期待できないという話です。


    建設の場合は「現場」というわかりやすい例がありますが、ホワイトカラー同士の場合も罠があります。

    通訳業務の業務での許可なのに、経理の業務が大半を占めていたら同じく不法就労になり得ます。特に、本人の経歴に経理に関する経験が無ければ更新はできないでしょう。


    特に転職で職務内容が変わる場合は、ただちに問題になるわけではないですが更新が出来なくなってしまうので、新しい業務も本人の学歴・職歴にひもづいてますよ、と確認してもらう「就労資格証明書」の交付申請をお勧めする場合もあります。


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  • 特定技能・技能実習の注意点

    まず技能実習は転職不可なので、「就労ビザ持ってるよ」と技能実習の在留カードを見せてきたらほぼ逃亡した実習生です。雇えません。
    お断りしましょう。


    特定技能の場合は勘違いしやすいかもしれません。
    外食業から外食業などの転職だとスムーズにそのまま働いていいんじゃない?と思うかもしれませんが、特定技能は雇用主と紐づいた許可です。

    どこどこの雇用主のもとでなら支援体制も審査したし働いていいよ、という許可なので、申請した就業先でしか働けません。


    この場合は特定技能から特定技能への変更申請が必要になります。

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  • アルバイトの注意点

    例示したとおり、アルバイトのオーバーワークの事例が多いですね。

    アルバイトで雇えるのは、「資格外活動許可」を持ってる人です。

    留学生や家族滞在の方が主にこの許可を持っています。

    まずは在留カードの裏に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」などのハンコが押されているかを確認してください。


    そしてさらに他にアルバイトしてるかを必ず確認してください。

    週28時間の考え方はシビアで、週のどこから数えても28時間を超えてはいけません。

    月~金曜 で5時間ずつ働いたら、 土曜は3時間しか働けず、さらに土曜に3時間働くと日曜は就業不可、そして次の月曜は5時間以上は働けないという計算方法です。

    留学生の方などは働き者でかけもちしてる人は多いですが、28時間の管理でミスする人が結構います。そうなると卒業後の就職にも影響してくるので、かけもちの子には注意してシフトを組んであげてください。


    かけもちを隠してオーバーワークした場合は本人の責任ですが、知ってて働かせた場合や、自社で28時間を超えさせた場合は当然雇用主が不法就労助長罪に問われます。しっかり把握しましょう。


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  • その他の在留資格の注意点

    興行や芸術はなかなか判断に困ります。

    「本人に報酬が発生しないなら有料公演に出演してパフォーマンスをしていいのか」ときかれて回答に困り、入管にも何回か聞いてみたのですが「して欲しくないけど、ただちに違法とも言えない」と回答されたかと思うと「ダメです」と言われたときもありました。不可と考えるのが妥当でしょう。


    ちなみに日本人が海外で路上パフォーマンスをできるか調べたことがあるのですが、投げ銭を受け取らなくても許可が必要という国がほとんどでした。


    逆に就労に関して最強と言われるのが永住者や日本人の配偶者と言われる「身分系」です。これらの在留資格には就労制限が無いので、日本人と同じように雇って問題ありません。

    一点念のためですが「家族滞在」は身分系ではりません。

    何かしらの在留目的で滞在している人の家族が、家族として帯同することが活動目的の在留資格なので、就労するには資格外活動許可が必要になります。

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2025年に茨城県大洗でインドネシア国籍の人たちが不法残留・不法就労で29人が一斉摘発されました。


人手不足に悩む大洗の人たちが不法就労助長の犯罪に手を染めていく経緯を想像すると他人事ではありません。

先述したように、働きたい人と働き手が足りない事業者の利害が一致してるとそんなに悪いことじゃないんじゃないか?という錯覚が生じたのでしょう。

実際に外国人たちも根っからならず者ってのも少ないので、接してみたら意外と好印象だったりしたらなおさらです。

さらに、最初に不法な雇い入れをした事業者が捕まらずに労働力を確保したのを見た人たちが「へえ。じゃあウチもやろっかな」と次々と手を染めていったのでしょう。


在留資格に限らず行政書士の仕事をしてると「ウチの業界ではみんなやってるよ」みたいなことを言われることがたまにあります。

実際、制度が形骸化してしまってる場合や、行政庁の裁量で運用されていることも多々あります。

そんな時は、丁寧に法律や制度の主旨を説明し是正をうながすのですが、そもそも制度の穴をつこうとするお客様はお断りしなくちゃいけないのでとても気を遣うところです。


不法就労助長罪については少なくとも制限速度40キロの道路を41キロで走行するのとはわけが違います。

窃盗や暴行と同じと肝に銘じてください。

大洗の例のように、周りがやってて意外とお咎め受けてないからウチも、というのは万引きの流行る荒れた学校みたいなものです。

かならず 地域や業界の評価を汚します。



もしも不法就労させてしまったら

この記事を読んで、あ!うちクロだ、と気づいたら


  • 残念ながら責任は不可避です

    先述の通り「知らなかったでは済まされない」が原則なので、詐欺行為や誤認もやむをえない事情が無い限り、お咎めなしというわけにはいきません。


    速やかに入管に報告し、誠意ある対応すれば軽減される可能性は十分にあります。


    交通事故を起こして逃げるか警察呼ぶかと同じですね。

  • グレーの場合はまずは在留カード確認

    判断に迷う場合はまずもう一度在留カードの確認です。

    コピーを必ず取って、確認した記録を残しておきましょう。


    我々行政書士に相談いただいても、残念ながら我々にできることはそんなにないのです。

    しかし、入管法に詳しい弁護士さんを紹介することはできます。


    行政書士によってはお断りされるかもしれませんが、相談してみてもいいでしょう。

  • 別れはつらい!?

    外国人本人はほぼ間違いなく入管に収容され帰国することになるのがほとんどでしょう。

    その外国人がいい人であればあるほど、可哀想に感じるでしょうし、別れが辛く感じるかもしれません。


    もし再びその人を正規に迎えたいというのであれば基本的には難しいのですが、上陸拒否期間を待って、理由書や嘆願書などを準備して可能性を探る道はあります。


    そんな時は行政書士にご相談ください。

以上、不法就労助長罪についての説明でした。

繰り返しになりますが入管法を知らないと、困った外国人に親切にしているような感覚さえ感じてしまう可能性があります。

経営者として責任感を持って対応してください。


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