遺言作成は相続人全員の課題

早い、遅いではなく防災セットのように遺言の準備を

いつになるかはわからないが必ず発生するのが相続です。

にもかかわらず日本で遺言を残している人は8~10%くらいではないかと言われています。


なぜ、遺言をしないのか。

ざっくり理由を挙げてみると、「縁起でもない。まだ元気だから必要ない」「大げさにするほどの財産じゃない」「めんどくさい」というのが大半です。

不思議なもので、この感情は歳を取るほど「作ったほうがいいんだろうけど、今じゃなくていいや」という選択になりがちです。

身もふたもない言い方をすれば、自分が死んだあとは好きにやってくれ、という気持ちもあるでしょう。
さらに争いになる心配もないような親族関係で、財産もそんなに多くなければ、庶民のくせに金持ち面してるようで気恥しいということもあるかもしれません。


そんなタイプの親御様は放っておいても遺言は残しません。


子供たち側でお尻を叩かなければ、わざわざ面倒なことに取り組むはずがないことを理解することが第一歩です。

弊所に相談いただく遺言のケースもほとんどが子供主導です。


今回は、子供世代の皆さんに遺言を自分ごととして捉えてもらうために記事を作成しました。

子どもが「ファシリテーター」になるべき理由

遺言を作成するメリット

  • 遺言しなくてもゴールはできる

    相続人たちが仲が良くて、欲深くなければ別にゴールはします。

    すんなりと遺産分割協議書に相続人全員で署名押印すれば問題ないです。


    ところがこの「協議」というのが妙に難しいのです。

    難しいと言ってもわかりやすく揉めるということではなく、どうやって分けよう?って部分です。

    平和な人たちなら法定相続分どおりにわけるのでいいよ、という方が大半だと思います。

    預金や金融財産だけならスパッと分けることも比較的容易でしょうが、不動産や自動車など換金しにくい大きな財産があると急に話はスムーズにいかなくなります。


    物件を持ち分で割って共有名義で登記すれば、公平だけど変更や処分が将来的に面倒になります。
    誰か一人が相続して、差額を他の相続人に支払う代償分割という方法もありますが、その一人が代償金を払う能力がないとこれもまた面倒です。

    誰も物件いらないから売却して分割しようというのもわかりやすいですが、誰かが代表して慣れない売却の手続きを進めなくてはいけません。


    一年がかり、下手すればそれ以上の長い作業になることでしょう。

    それでも仲が良ければ四苦八苦しながらも話し合って解決できるでしょう。

    その苦労を通して故人を偲ばれるし、家族が顔を合わせる機会も増えるという意味では、悪いことばかりとも言えないかもしれません。


    その点、遺言の目的は、争いを避けるため、というのも勿論ですが、実は、協議をスムーズに進めることと、何より穏便であるほどどうやって決めようか迷ってしまうお人よしにとって、「遺言で決めてくれてるとありがたい」、というのが良いところなんです。


    なので、子供世代が自分のためにも親の遺言作成の背中を押してほしいのです。

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  • 遺言書作成は「親の作業」ではありません。

    弊所では公正証書遺言を勧めているので、公正証書遺言を前提にすると、戸籍の収集や原稿チェックなどはご高齢の方には結構なご負担です。

    分割についても、細かい財産を確認するだけで結構疲れたりしちゃいます。

    結構な割合の方が「もういい。俺はよくわからんからお前らで勝手にやってくれ」と一度は口にしてるのではないでしょうかw


    それはそうです。
    先述した通り、仲いい関係ほど権利を主張するのがはばかられるといういかにも日本人らしい理由もあり、財産の分割という面倒を当人が決められるうちに先にやってしまおうというのが遺言手続きなんです。

    それなりに頭を悩ませ、決断を要する作業です。


    だからこそ、子供側が旗振り役になって、気長に話し合いをするのが望ましいです。

    族みんなで取り組む最後の家族会議なんです。



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  • 遺言を遺せたらやっぱり本人も達成感がある

    相続人側のメリットを列挙してきましたが、本人様にとっても様々な感情を体験できる家族イベントです。

    「家族に負担をかけずに済んだ」という安心感を得られることはもちろん、その過程を通して自分の人生で積み上げてきた財産を改めて認識することや、家族で話し合う機会を自分が創出しているという感覚も、とても新鮮な体験のようです。


    先述のように「作ったほうがいいんだろうけど、今じゃなくていいや」というタイプの親御さんにとっては、「俺が手配するから遺言やろうよ」と背中を押すことは、実は嬉しいことなんではないかと思っています。

    「家族イベント」ですから、子から親へのプレゼントとしてもきっと喜ばれるのではないでしょうか。


    照れたり、面倒がって敬遠されることも多いですが、手続きが終わると皆さん晴れやかな顔をされています。

    ぜひご家族が背中を押してあげてください。

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きっかけを作ろう

とはいえ「親父、遺言書いてくれよ」って切り出しどころ難しいですよね。
どんな流れで切り出したらいいか紹介してみましょう


  • よその相続話がでたとき

    よその家族の相続話が出たときは切り出しやすいタイミングです。


    とはいえ不幸ごとに伴う話ですし、あまりポジティブな印象ではないことでしょう。
    「自分も考えなきゃな」と必要性を感じているのなら、「それはありがたい」と感謝を示し、背中を押しつつ、面倒ごとの部分を「手伝うよ」とむしろ緊張をほぐしてあげてポジティブなアクションなんだということをお伝えしてあげて欲しいです。

  • 家族が集まったタイミング

    盆や正月で家族が集まったタイミングはきっと全員楽しい時間ですし、一番嬉しいのは親だと思います。


    また集まるきっかけとして遺言作成を提案するのは容易だと思います。

    離れて暮らす家族も巻き込めるのもメリットです。


    むしろ必要なのは子供側が家族イベントとして企画運営するぞ


  • 子から親へのプレゼント

    この記事で紹介している「楽しい部分」に共感いただけているのなら、のんびり暮らされてる親御さんにプレゼントとして提案するのも良いでしょう。


    繰り返しになりますが、手続きが完了した瞬間の遺言者はとてもすっきりした顔をされます。


    親孝行として提案してみましょう。

いかがでしたでしょうか?

「親父、遺言やっといてよ」と言うだけだったなんて方も多いのではないでしょうか?

遺言は親が単独でするものではなく、子供が旗振りになって家族で進めるものなんだというマインドチェンジになったとしたら幸いです。


あとは現役世代である子供世代がどれだけ労力を割けるかですよね。
その部分をお手伝いするのが我々行政書士です。


自分の親に遺言を勧めたいというご相談お待ちしてます。

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